ラジオはSportifyによって滅ぼされる?

長い間、音楽業界はCDの緩慢な衰退やオンラインでの著作権侵害など数多くの危機に苦しんできました。そして、新たに、Sportifyを初めとするストリーミングサービスによって、ラジオ放送局が滅亡の危険にさらされています。

日本のリスナー層は、一見、安定した人口を保ち、放送局にとっては心強い、ラジオの強固なファンのようです。しかしながら、このリスナー層には若い世代が不在であることが明らかとなってきました。ラジオ局が若年層を取り込もうと力を尽くしているにも関わらずです。

日本は世界第2位のレコード音楽市場で、音楽ビデオや音響製品、デジタル製品全体で27億米ドル以上を生み出しています。それらに加えて、ストリーミングサービス関連の需要が増加し続けているのです。

ここで、ストリーミングサービスの話題からは少し外れますが、お知らせしたい興味深い事実が1つあります。新型コロナ禍の拡大に伴って、ラジオを聴く人の数が増加しているのです。現在では、オフィスやジム、店舗、住宅など、以前よりもずっと多くの場所にラジオが置かれ、ラジオ放送が聴かれるようになりました。

Sportifyはアジア市場をいかに攻略したのか

アジア市場、特に日本市場は、制覇が非常に困難だと考えられています。それは、決して的外れな見解ではありません。アジア市場は多様です。特に日本については、他の国々といかに異なるかについて熟知して攻略する必要があります。

米国には50の州がありますが、基本的には同じ文化、同じ言語を共有する人々から成り立っています。一方、アジアは、28のそれぞれまったく異なる国から成り立っているのです。

それでは、何が、Sportifyを唯一無二の存在に押し上げ、さらには、Sportifyによる日本市場の制覇を可能としたのでしょうか。

Sportifyには、とてもシンプルで効果的な戦略が1つあります。新しい国の市場へ参入するにあたって、Sportifyはその国で最も有名なアーティストを選びます。つまり、各国にその国民を熱狂させ得るアーティストが1人いるのであれば、そのアーティストのストリーミングサービスに皆が夢中になるので、それを突破口とするという戦略なのです。

それに加えて、Sportifyには徹底的なマーケット調査を行う十分な資金力が有り、その点においてラジオ局に反撃する余裕はありません。市場へアプローチするにあたって、Sportifyはまずアプリを用意します。これは、ほとんどの人がコンピュータなどではなくスマートフォンを使って音楽を聴くからです。

そして、Sportifyはソーシャルメディアを活用し、潜在的なユーザーに狙いを定めます。新機能を追加し発表する度に、SportifyはFacebookでのディスカッションから何らかのアイデアを掬い上げます。このストリーミングサービスのもう1つの強みは、アプリを用意する国に応じて、継続的に訴求のスタイルを調整していることです。加えて、Sportifyは、国毎、地域毎のコンテンツに常に焦点を置いています。

 

例を挙げると、隣国のインドネシアの火災の影響をマレーシアとシンガポールが被っていた時、Sportifyは火や煙に関連した40近くの楽曲からなる「Hazed and Confused(霞みに惑わされて)」という特別なリストを作成し、提供しました。

このプレイリストは、言うまでもなく、大ヒットしました。日本のラジオ放送の地方局、大手キー局の何れにとってもSportifyとの対峙が厳しい試練とならざるを得ないことをこの件が示しています。誰しもが聴く楽曲を選択したいと思うものですが、ラジオにはそれは無理なのです。

日本のラジオ局はまだまだ魅力がたっぷりと有りますが、Sportifyによって完全に消滅に追いやられてしまうことを危惧している人たちも増えつつあります。